桑名正和(くわなまさかず)

冬につけるヤツデの花

2023.12.26

 11月、12月と気温が下がっていくにつれて木々は紅葉、そして落葉。
枝だけになった木が増えた森は、地面にまで日が差し込むようになります。私が普段見て回っている場所は都会の公園が主なのですが、公園も同様。冬になったとはいえ、太陽の光は木々の枝をぬけてさしこんでくるので暖かく感じます。
 日差しを受けるようになることで、目立つようになる植物もあります。小学4年の理科の教材では今の季節にあわせて「冬の植物」を学習します。冬に咲く植物として登場するのがこちら。

 天狗のうちわとしても知られるヤツデです。
 ヤツデはウコギ科ヤツデ属。日本の古くからはえている植物で、大きな葉が8つに分かれて見えることからヤツデというシンプルな名前の付き方です。

 見ての通り、他の植物が葉を落としたあとでも大きな葉を立派に残している常緑樹です。
常緑樹は寒い中でも葉をつけて花をさかせているので寒さに強そうな印象もありそうですが、それは逆。
寒さをのりこえる「落葉」という能力がないという言い方もできます。実際、ヤツデが生息している北限は東北地方の南側。北海道では見ることができません。

 遠くから鑑賞するのが一般的なヤツデですが、せっかく花がさいているので近づいてみました。

 中央から先がとがったかんじの花びらが5枚。花びらと花びらの間からのびるように5本のおしべがみえます。小さいハエがとまっているあたり虫媒花らしさも感じます。

ハエがとんでくるということは、中にみつがあるということでしょう。
ハエの体におしべの花粉がついて、めしべについて受粉。
花の中央に小さくみえる白っぽいものがめしべのようですが、
目線をうつすとちがった花があることに気が付きました。

 写真下部は花びらとおしべで花であることがわかりますが、上のほうに中央から数本の糸のようなものがでているものがあります。こちらがめしべ。1つの花からは5本でています。

花が咲き終わった後、花びらとおしべが落ちて、時間差でめしべがのびてきます。
ハエの体についた花粉がめしべについて受粉。1つの花の中で自家受粉としない工夫、おしべとめしべが出る時期がかわるという、他の植物では見られない花の咲き方です。

 ヤツデは森林に生えている低木の1つとしても学習します。森林内では、多くの高木にはばまれて太陽の光があたりにくいですが、そんな弱い光でも枯れることなく生えている陰生植物です。生育に強い光を必要としないことから、マンションやビルのわきに観葉植物として植えられていることもあり、都会でも見かける機会はけっこうあります。

 ヤツデの花を見かけたら、遠くから、近くから、眺めてみてください。

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