白井亨(しらいとおる)

~東京都世田谷区 上北沢と下北沢って遠くない?編~

2023.04.22

みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。

以前のブログで「上野と下谷」のことを取り上げました。JR上野駅の西の台地が上野、東の低地が下谷という「対になる地名」があるという話題でした。
このような対になる地名は、多くの場合その地名どうしが隣り合っていたり、同じ道路や鉄道の沿線に並んでいたりします。例えば、東武東上線に乗ると、池袋から2つ目の駅が下板橋、4つ目の駅が中板橋、6つ目の駅が上板橋となっています。また、杉並区の甲州街道を下っていくと、下高井戸、上高井戸という地名が見られます。どちらも都心に近いほうが「下」で遠いほうが「上」になっているのは、おそらく京都に都があったころの名残でしょう。都に近い西の方が「上」、東の方が「下」ということですね。

ところが、世田谷区にある「北沢」という名のつく2つの駅は、上北沢が京王線、下北沢が小田急線の駅になっており、同一線上にはありません。さらに、その2つの駅の間の距離も、少々離れているように見えます。これは「?」ですね。

早速、いつもの通り地図を見てみることにしました。

すると、下北沢駅の南のほうに「北沢川緑道」という道があるのを発見したのです。どうやら、2つの地名に関係がありそうですね。
かつての東京には多くの川が流れていたのですが、都市化にともない地下を流れるようになっているものも多くあります。このような地下の水路のことを「暗渠」と言いますが、その上がそのまま道路として使われていることもよくあることです。おそらく北沢川緑道もかつての川の上につくられている道でしょう。さらに、「緑道」という名称からは、歩行者が通るための道ではないかということもうかがえます。これは歩いてみるしかないですね。

その前に、この川の源流がどこにあるのかを調べてみました。
すると、上北沢駅の近くにある将軍池(下の写真)というのが源流と言われていることがわかりましたので、まずはそちらに行ってみることにしました。

将軍池は、上北沢駅から5分ほど歩いたところにありました。やはり上北沢の地名は「北沢川の上流」ということからついたものだということで間違いなさそうです。

上北沢の由来を確かめ、地図で見た北沢川緑道を目指します。
上流部はすべて暗渠化されていて、北沢川の流れがはっきりとわかるところはありません。しかし、途中の道の曲がり方や緩やかな勾配から、きっとこのあたりを流れているのではないかというところはいくつかありました。
また、途中には「赤堤」という、いかにも川に関係のありそうな地名もありました。こちらも調べてみたところ、やはり北沢川の堤が築かれていたところで、関東ロームの赤土でできていたところから赤堤となったそうです。

予想通り、北沢川緑道は下の写真のようなとても歩きやすい、整備された遊歩道でした。こんな散歩道が家の近くにあったらいいですよね。

この日は桜が満開だったこともあり、平日にもかかわらず多くの人が散歩を楽しんでいました。写真だとちょっとわかりにくいんですが、左側の木々があるところには小さな水路が流れています。北沢川は暗渠になっていてこの道の地下を流れていますが、再生水を使って水路を作っているんだそうです。なかなか魅力的な演出ですよね。

大きな通りと交わるところでは、緑道はしばしば途切れます。そのような場所では、北沢川に橋が架かっていたことがわかるものもいくつか見ることができました。上の写真は「環七」との交差点ですが、かつての橋の欄干が残されていました。昭和35年完成と書いてありましたので、見た目の通りとても古いものです。よく撤去されずに残っていたものだと、ちょっと嬉しくなりました。
ただ、緑道の正面に横断歩道がないところも多くあり、そのたびに迂回しなければならなかったのはちょっと煩わしく思いました。散歩する人のことを考えて欲しいなぁとも思いましたが、交通量の多い道路で横断歩道の数を増やせば渋滞が発生しやすくなってしまいますね。ここは、我慢して少しだけ多めに歩くしかないのでしょう。

北沢川は、やがて烏山川と合流し、そこからは目黒川と名を変えて流れていきます。上の写真の石碑があるところが、2つの川が合流する目黒川の起点です。ここまで桜を見ながら歩いてきましたが、目黒川と言えば有名なお花見スポットでしたね。きっとこの下流のほうでは桜を楽しむ人で、大変な混雑になっていることでしょう。そう考えると、多少の人出はあったもののゆったりと楽しめたこの桜散歩が、とても素敵なものに思えてきました。

桜を楽しみながらの散歩はとても楽しく、いつの間にか東急田園都市線の池尻大橋駅近くまで歩いていました。

「あれ? 下北沢はどこだ??」

地図で下北沢駅の位置を見ると「北沢川の下流」というには、距離があり過ぎるような気もしますね。

自然のままの川はときどき流路が変わることもありますので、もしかすると昔はもう少し近くを流れていたのでしょうか?
また、このあたりの地図を標高のわかるもので見ると、下北沢駅の東西に谷があることがわかります。昔は北沢川に流れ込む川が流れていたのでしょう。これらの川を北沢川の一部と考えて、その下流としたのでしょうか?

いずれにしても、現在の下北沢は「北沢川の下流」と言うには、少々無理がありそうです。

上北沢駅周辺の住所は「上北沢」ですが、下北沢駅周辺の住所は「北沢」となっています。下流でないことに遠慮して「下」を取ったというのは、たぶん考えすぎでしょうね(笑)

「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。

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