白井亨(しらいとおる)

~埼玉県さいたま市・川越市、千葉県成田市、茨城県龍ケ崎市 うなぎを社会科的に考察しよう編~

2023.05.25

みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。

いつもは、街を歩くことをテーマに書いているこのブログですが、今回はちょっと趣向を変えてみようと思います。今回のテーマは「うなぎ」です。

「うなぎが有名な都道府県は?」というアンケートを取ると、1位静岡県、2位愛知県、3位福岡県となるそうです。
静岡県は浜名湖のうなぎが有名ですよね。では、なぜ浜名湖のうなぎが有名なのかを考えたことはありますか?

社会科の学習で意識したいことの1つとして『なぜ?…と疑問を持つ』というのがあります。浜名湖はうなぎが有名というのはただの知識であって、これをただ「ふ~ん」と覚えるだけでは社会科のおもしろさはわかりません。
浜名湖のうなぎが有名なのは、ここが日本のうなぎ養殖の発祥の地だからなんです。浜名湖周辺は東海道新幹線の車内からも養殖池を確認できるくらいですから、うなぎというと浜名湖を思い浮かべる人は多いですよね。
2位、3位については、愛知県には「ひつまぶし」、福岡県には「せいろ蒸し」という独特の食べ方があるので、思い浮かべる人が多いんでしょうね。

全国各地にうなぎの名産地とよばれるところはありますが、関東地方でもいくつかの地名を挙げることができます。埼玉県の浦和や川越、千葉県の成田、茨城県の牛久などがそうですね。これらの地でうなぎが有名になっているのは、やはり何か理由があるのではないでしょうか。
社会科の学習で「なぜ?」と同様に意識してほしいことの1つとして『共通点を探す』というのがあります。先ほど挙げた場所の共通点を、まずはいつもの地理院地図から探ってみることにしましょう。

上の地図は浦和周辺のものです。少しわかりにくいですが、浦和周辺は台地の先端部になっており、いくつかの河川や沼(池)があることがわかります。町の発展とともに、池や小さな川などは姿を消すことが多いので、昔はもっとうなぎがとれる水辺があったのでしょう。

次は川越周辺を見てみましょう。東の方に川が流れ、その周辺は低地になっています。小さくてわかりにくいですが、そのほとんどが水田として利用されています。池もいくつか確認できますね。まちがいなくうなぎがとれそうです。そして川越の町は、その西の台地上にあることもわかります。

今度は成田周辺です。成田市の北西には印旛沼があり、その周辺は低地が広がっています。印旛沼の周りは水田になっていますが、かつてはこのあたりも水辺だったのでしょう。間違いなくうなぎがとれそうですね。そして成田の町は、浦和や川越と同じように台地上にあります。
共通点が見えてきましたね。1つはうなぎのとれそうな低地や河川、沼などがあること。もう1つは、台地上に町が位置していることです。その他に共通点はないのでしょうか?

そこで、3つの町の成り立ちを調べてみることにしました。

成田は、調べるまでもなく成田山新勝寺の門前町として発展した町ですね。駅から新勝寺に続く参道は、休日には多くの人で賑わっています。
川越は「小江戸」の別名を持ち、古くから城下町として栄えてきました。江戸に近いことから、江戸の北の守りの地として重要視されていた場所で、現在も残されている蔵造りの町並みは、観光地としても賑わっています。
浦和は埼玉県庁やさいたま市役所がある、埼玉県の政治の中心地です。さいたま市ができるまでの県庁所在地は浦和市でしたからね。かつての浦和は、中山道の宿場町として栄えていました。
もう1つの共通点が見えてきましたね。この3つの町は、それぞれ門前町、城下町、宿場町として、多くの人が集まり、行き交うところでした。
社会科の盲点として、農業や工業といった「つくる側」のことばかり意識して、消費者つまり「買う側」のことを意識しないということがあります。産業というのは「つくる側」だけでは発展しません。いくら、うなぎがたくさんとれても、それを食べる人々がいなければ名産地にはならないはずです。

想像力を働かせましょう。この『想像力』というのも社会科の学習、特に歴史学習においてはとても有効です。
昔の旅人は長い距離を歩いてきます。きっと町に着くころにはおなかをすかせていることでしょう。ようやくたどり着いた町の店からうなぎの良い香りが漂ってきます。空腹の旅人はその匂いにつられて店に入ります。栄養価の高いうなぎは、旅人の空腹だけでなく疲れも癒してくれたでしょう。心から満足した旅人が、他の町に行ったときに「〇〇のうなぎはおいしいよ!」と話をすることで、口コミが広がっていくのです。グルメサイトなどない時代ですから、3つの町もこんな経過を辿ってうなぎの名産地になっていったのではないでしょうかね。

さて、関東のうなぎの名産地としてもう1つ名前を挙げた牛久は、ちょっと様子が違うようです。

上の地図でわかる通り、ここには牛久沼という沼があります。もちろん、ここではうなぎがとれたでしょう。
現在の国道6号線やJR常磐線は、沼の東岸を通っていますが、昔はこの沼を渡し船で渡っていたそうです。
ある時、船着き場近くの店でうなぎとご飯を注文した旅人が、船が出てしまうので、丼のご飯の上にうなぎを乗せてそのまま船に乗り込んだそうです。昔は、うなぎとご飯は別々になっていたんですね。対岸についてそれを食べたところ、うなぎが程よく蒸され、ご飯にタレが浸み込んでいてとてもおいしかったらしいのです。そうなんです。この牛久は「うな丼発祥の地」なんです。
今でも、国道6号線沿いにうなぎ屋さんが多くあり、「龍ケ崎うなぎ街道」という名もついているとか…。

実は、今回のブログは、このHPで同じようにブログを書いている高校入試国語担当の内田先生からのオーダーなんです。みなさんも、この街について書いて欲しいとか、こんな「?」について知りたいなどというのがあったら、ぜひ教えてくださいね。

そうそう、内田先生からのお題は、「本当にうなぎがうまい街はどこ?」だったのを思い出しました。最後にその話題にも触れておきましょう。
成田のうなぎも、牛久のうなぎもおいしかったですが、味というのは人それぞれ好みがあります。
そこで、味だけではなく、これまでいちばん印象に残っているというものを書いておきますね。
それは、もう10年以上前のことになりますが、島根県松江市で入ったうなぎ屋さんです。それほど大きな店でなく、他のお客さんもあまりいない静かな空間で食事ができました。窓からは宍道湖の湖面が見え、時間が経つにつれて、美しい夕日が宍道湖を赤く染めていきました。そんな空間と景色を眺めながら、ゆっくりと味わったうなぎのことは、今でも忘れられないですね。

「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。

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