白井亨(しらいとおる)

~千葉県市原市 小湊鉄道編~

2022.10.21

~千葉県市原市 小湊鉄道編~

みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。

前回取り上げた上総国分寺の「上総」という地名はちょっと不思議なんです。
旧国名には、この「上総・下総」のように、「上」「下」または「前」「後」がつくものがあります。
例えば、現在の群馬県は「上野(こうずけ)」、栃木県は「下野(しもつけ)」、現在の福井県は「越前」、新潟県は「越後」となっています。これらの地名の「上下」や「前後」は、都に近いほうが「上または前」、遠いほうが「下または後」となります。
ところが、現在の千葉県は北部のほうが「下総」、その南に「上総」となっており、京都や奈良など、かつての都から来た場合、先に下総のほうを通りそうな気がしますよね。
でも、これは鉄道などの陸路を使う現在の移動の場合です。かつての東京都と千葉県の県境付近は多くの入り江や川、湿地があったところで、人が通るのは困難な場所が多かったのです。おそらく房総半島も今よりスリムで、現在の低地の多くは海だったはずです。ですから、千葉県に来るには、三浦半島から東京湾を渡ってたどり着くことになります。言うなれば東京湾アクアラインを通って千葉県にやって来るのと同じですよね。アクアラインの千葉県側の起点は木更津市。ここはかつての上総国です。
・・・とここで、前回の地図をもう一度見てみましょう。

房総半島の陸地部分が今よりも少なかったとすれば、現在は水田が広がっている地図の南や西の低地は、かつては海だったと考えられないでしょうか?
何かその痕跡はないかと、もう一度このあたりの地図を眺めていると、あることに気づいたのです。

上総国分寺の最寄り駅となるのはJR内房線の五井駅。
この駅からは、小湊鉄道という小さな鉄道が出ています。下の動画をご覧ください。たった1両のディーゼルカーといい、踏切の音といい、まさに昭和を感じさせる良い雰囲気でしょう?

五井駅からこの鉄道に乗って2つめの駅に「海士有木」という駅があります。現在は内陸になっているところに「海」がつく地名があるではないですか。調べてみると、「海士」というのは漁夫(海人)の集落という意味だそうです。
これを踏まえて駅付近をいつもの地理院地図で見てみましょう。

海士有木駅のある場所をよく見てください。黄色の点線で囲んだところが入り江に見えませんか? そして、駅のあるあたりが、その入り江の出入り口となっているようにも見えますよね。
波のおだやかな入り江は、地名の由来となっている「漁夫の集落」をつくるのに最適の地形です。やはり、このあたりの低地は海で、人々は漁をして暮らしていたのでしょう。

そうすると、前回の想像がさらに膨らみますね。東京湾を船で進んで陸に近づいてくると、はるか遠くに立派な国分寺の建物が見え、それがだんだんと大きくなってくるんです。昔の船の旅は今ほど安全なものではないですから、この風景を見た旅人は無事に着いたことを確信し、安心したことでしょう。

ちなみに、「海士有木」は「あまありき」と読みます。難しい地名ですね。
小湊鉄道には「飯給」という駅もあります。これもかなりの難読地名です。答えは敢えて書きませんので、ぜひ挑戦してみてくださいね。

「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。

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