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イノコヅチの種子は動物について運ばれる

 10月は曇り空が多く、傘が手放せない毎日でしたが、11月になるとすっきりとした秋晴れの日が多くなります。だんだんと涼しくなっていく中で、今の時期ならではの植物も見かけます。
 今の時期ならではの植物といえばこちら。

 青空に緑の葉、そしてあざやかな黄色がきれいなキンモクセイです。
 キンモクセイは芳香剤としてもおなじみです。近づくとほのかな香りがただよってきます。

 青空をバックにキンモクセイを撮ると実にきれいです。
 一方、キンモクセイが咲いている足元を見ると、こちらも秋ならではの植物の姿が。

キンモクセイの花が咲く横にはつぶつぶのようなものがたくさんついている茎がありました。

 あたりを見渡すと、けっこういろいろなところに生えています。

こちらの植物はイノコヅチです。
 ヒユ科イノコヅチ属の植物で、古くから日本に生息しています。
 イノコヅチは漢字では「猪小槌」で、いのししのひざの部分のことを指すようです。
 イノコヅチの葉がついている付け根の部分がふくらんで、それがいのししのひざのように見えるからと。
 葉の付け根に注目して命名されたとは、めずらしい名前の付き方です。

 イノコヅチはこじんまりと小さな花をつけるので、花が咲いていることにはほとんど気がつきません。
 一方で特徴的なのはイノコヅチの種子のほうです。

 小学4年生の理科では各季節の植物について学習します。秋の植物を扱う単元では、できた種子がどのようにして運ばれていくかという内容もでてきます。
 たとえば、タンポポであれば花が咲き終わってできた綿毛が風に乗って遠くまで運ばれる、といった具合です。

 イノコヅチは茎にたくさんついているつぶつぶに見えるものが種子です。

種子のひとつひとつの先端が細長く広がってのびています。
 この部分が動物の毛について運ばれていきます。
 イヌやネコを連れて公園などを散歩しているときに、イノコヅチが生えているところを通ると、毛にたくさんからみついてとりにくくなります。イノコヅチが生えている場所は通らないように注意です。

 野山では、イノコヅチが生えているところを様々な動物が通るときに種子が毛にからみつきます。毛にからみついてイノコヅチの種子は次第に落ちていくので、もともとイノコヅチが生えていた場所とははなれたところで、発芽して成長することができます。

 手でさわってみると、痛くはないですが、ちくちくとしたかんじでひっかかりやすいのがわかります。衣服にあてると、数粒がそのままくっつきます。

 秋は花だけでなく、種子に注目しても面白いものです。
 心地よい秋晴れになったら、空とあわせて地面近くの植物も眺めてみてください。

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