黒田裕史(くろだひろし)

「“三人称語り”に秘められた思い」

2022.10.03

「“三人称語り”に秘められた思い」

こんにちは。英語担当の黒田です。
今回も引き続き、オスカー・ワイルド作『幸福の王子』の一節を紹介したいと思います。

今回の一節は、街の人々の様子を見て嘆き、涙を流している王子の姿に、ツバメが気づく場面の描写です。

But before he had opened his wings, a third drop fell, and he looked up, and saw Ah! what did he see?
(しかし、彼=ツバメが翼を広げる前に、3つ目の雫が垂れてきたので、見上げてみると―おお、彼は何を見たのでしょう?)

さて、この “Ah!” は、誰の驚きでしょうか?
普通に考えれば、ツバメが、上から落ちてきて涙に驚いたと考えるでしょう。

でも、『幸福の王子』は「三人称語り」で物語が紡がれていきます。

物語や小説には、「三人称語り」「一人称語り」という手法があります。
「三人称語り」というのは、登場人物でない語り手が、三人称(「彼」「彼女」など)の言葉を用いて、物語を表現する手法です。対して「一人称語り」というのは、主人公が一人称(「私」「ぼく」など)の言葉を用いて語っていく手法です。

ということは、今回紹介した一節の ”Ah!” は、この物語には登場していない、第三者が驚いていると解釈することもできますね。では、この第三者は誰なのでしょうか?

筆者であるワイルドだと考えることはできないでしょうか。
ツバメの気持ちに寄り添って、筆者=ワイルド自身の驚きが登場したと考えることもできると思います。

この一節のあと、こう続きます。
His face was so beautiful in the moonlight that the little Swallow was filled with pity.
(彼=王子の顔は月明かりの中でとてもきれいだったので、小さなツバメは哀れみでいっぱいだった)

先ほどの驚きは王子への「哀れみ(pity)」に変わります。
ワイルド自身が、王子に哀れみを感じていて、ふと、”Ah!” と声を漏らしてしまったと考えることもできそうです。

こんな風に、物語の語り手が文章の端々に顔を出して、「思い」を表現してきます。
筆者が物語から何を感じているのか? 読者に何を感じてほしいと思っているのか?
そうした筆者の思いに心を寄せて物語を読んでいくようになれると、より豊かに物語を感じることもできるのではないでしょうか。

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